レンズによる表現(広角・標準・望遠)の違い
広角・標準・望遠レンズは何が違う?
コンパクトカメラや一眼レフを使った事があれば、大抵はズームレンズが付いていて画面が広く写るように、もしくは遠くのものをアップで写るようにカメラのレンズを操作されたことがあると思います。
カメラのレンズには24mmや200mmというような表記があって、その数値によって写せる広さ=画角が決まります。その数値の事を焦点距離といいます。焦点距離が小さいほど広く写る「広角」、大きいほど狭く写る「望遠」になります。
35mm判換算の広角から望遠レンズで撮った風景
28mm
35mm
50mm
85mm
105mm
135mm
200mm
340mm
400mm
このようにレンズの焦点距離によって、被写体の写る範囲が変わります。
では、焦点距離について詳しく見てみましょう。
焦点距離とは
焦点距離とは、レンズの中心から像を結ぶ焦点までの距離のことをいいます。焦点距離の違いで、被写体を捉える倍率が変化して、上の写真のように撮影範囲=「画角」が変わります。
画角
画角は、一般的に35mmフィルムカメラのレンズの焦点距離で表します。レンズの種類を「何mmのレンズ」というのは、このことです。数字が小さいほど広角のレンズ、大きいほど望遠のレンズになります。
レンズの種類は、画面に捉える範囲の極端に広い14〜20mmを「超広角」、24〜35mmを「広角」、日常で人間の眼が捉えている範囲に近い45〜70mmを「標準」、標準から300mmを「望遠」、それ以上を「超望遠」というグループに分けられます。
デジタルカメラでは、35mm判換算の画角となるので、35mmフィルカメラで撮ったフィルムの1コマ(36mm x 24mm)の大きさとセンサーサイズがほぼ同じフルサイズのデジタルカメラの場合は、上記と同じ画角になります。
それよりも小さいセンサーサイズのAPS-Cは、メーカーや機種によって若干大きさの違いがありますが、およそ22.5mm x 15mm – APS-C(x1.6)から、24.0 x 16mm – APS-C(x1.5)のものになり、APS-C(x1.6)のカメラであれば、レンズの焦点距離(何mm)を1.6倍した数値のフィルムカメラ(またはフルサイズ・デジタルカメラ)のレンズで写る範囲の換算値になります。
例:35mmフィルムカメラ(またはフルサイズ・デジタルカメラ)に、50mmの標準レンズを付けて撮った写真と、APS-C(x1.6)デジタルカメラに50mmのレンズを付けて撮った写真を比べると、APS-Cの方は50×1.6=80で、80mm相当の望遠レンズで撮った撮影範囲が写ります。
さらに小さいセンサーサイズのマイクロフォーサーズでは、基本の縦横比が少し異なりますが(フィルム、フルサイズは3:2、マイクロフォーサーズは4:3)、17.3mm x 13mmと 縦と横がフィルム(フルサイズ)のおよそ1/2の長さになります。
例:35mmフィルムカメラ(またはフルサイズ・デジタルカメラ)に、50mmの標準レンズを付けて撮った写真と、マイクロフォーサーズで25mmのレンズを付けて撮った写真は、ほぼ同じ画角に写ります。
ちなみに同じような名前の、マイクロフォーサーズとフォーサーズの2種類のカメラ規格があります。どちらも同じ4/3型のセンサーサイズのカメラですが、マイクロフォーサーズの方が後発で、よりカメラシステムの小型化を図るためにつくられた規格になり、現在ではこちらの方が主流となっています。
デジタルカメラ・センサーサイズの比較図
注)APS-Cは、メーカーや機種によってサイズが図と微妙に異なります。
同じ焦点距離のレンズで撮影する場合、センサーサイズが大きい程、より広い範囲が撮れるようになります。つまり焦点距離が同じレンズでも、使うカメラの種類によって写る範囲である画角が変わってくるということです。
レンズによる効果
では広角、標準、望遠とレンズの焦点距離の違いから生まれる効果を、写真表現でどう使うかを見ていきます。
広角レンズ
【パースペクティブ効果】
近いものがより近くなり、遠いものがより遠くなる遠近感の強調によるダイナミックな表現効果で、カメラをより被写体に近づけることで効果が出てきます。
広角レンズを使うと、より広い範囲を写せるようになりますが、あえて被写体に寄っていくことでパースペクティブ効果を狙うと主題がハッキリしてインパクトのある写真になります。
【パンフォーカス効果】
広角になるほどに、同じ絞り値でも被写体の手前から無限遠までピントが合う範囲が大きくなります。レンズの絞りを少し絞っただけで画面全体にピントが合った緻密な写真になります。
デメリット
背景がボケにくく、映り込む範囲が広いために、余計なものが入りやすく、それによって画面が散漫にならないように注意します。主題が何かを意識した構図が必要です。
被写体に近づいたり、画面の端では歪みが大きくなるので、正確な形を表現する場合は使わない方がいい場面もあります。
標準レンズ
【自然な画角】
人間が、注視していない時に肉眼で視認できる視野に一番近い画角が約50度と言われていて、50mm前後のレンズ(35mm判換算)が標準レンズと呼ばれています。
【汎用性の高さ】
名前の通り見たままの自然な表現ができるレンズです。被写体にカメラを寄り、絞りを開けて背景をボカして望遠レンズ風に撮ったり、少し引いて、絞りを絞ってパンフォーカスぎみにすれば広角レンズ風にも使えるオールマイティなレンズです。
デメリット
普通に撮ると、インパクトの無い写真になりがちなので、注目を惹く写真にするには構図や絞りなどの工夫が必要になります。
望遠レンズ
【切り取り効果】
遠くの被写体を大きく拡大して切り取ることが出来るので、主題を強調できます。
【圧縮効果】
近くの被写体も遠くの被写体も、見た目の大きさの変化が少なくなり、遠近感が少ない圧縮されたような写真になります。
【大きくボケる効果】
被写界深度が浅い特性から、同じ絞りでも背景がよりボケた表現になるため、それによって背景を整理することで主題を目立たせることができます。
デメリット
被写体から離れて撮る必要があるので、撮影する場所を選びます。被写界深度が浅いので、シビアなピント合わせが必要になります。
レンズによる表現
レンズの焦点距離の違いにより、それぞれ特徴や違った効果が得られます。
カメラを構えた位置でズームして写る範囲を変えるだけじゃなく、被写体に寄ったり離れたりして焦点距離を変えることで上記のような効果が得られることを理解すれば、より写真表現の幅が広がります。
被写体の大きさを一定にしてレンズの画角を変える
手前にある約12cmの人形と約17cmの水筒を、広角から望遠までレンズの焦点距離を変えていき、画面で人形と水筒がおよそ同じ大きさになるよう被写体からカメラまでの距離を離していって、画角を変えて撮ると写り方はどう変わるか見てみましょう。
使用カメラはAPS-Cサイズのミラーレス・デジタルカメラで、ズームレンズを使い35mm判換算での画角です。
28mm
35mm
50mm
80mm
100mm
135mm
400mm
ご覧のように、焦点距離の短い広角レンズでは背景が広く写り、焦点距離の長い望遠レンズでは、背景は狭くなってボケていくことが分かります。
被写体を含めた背景の状況を写しこんで、より説明的な写真にするか、もしくは被写体のみを印象付けるように背景をボカした写真にするかを、レンズの焦点距離とカメラと被写体の距離の関係で様々な表現ができます。
カメラで写真を撮る時に、このようにレンズを変えたり、ズームしたりしてどんなイメージを画にしたいかを考えながら、そして被写体との距離を寄ったり引いたりして動きながら撮ると、より表現力が高まります。ぜひ色々とチャレンジしてみて下さい!