ブツ撮りをしてみよう Vol.1〜自然光ライティング
最近はSNSで、自分のお気に入りの物や、食べ物をスマホやデジカメで撮って人に見せることが日常のこととして受け入れられていますね。
また、広告を出す商品やオークションに載せる品物を自分で撮影する場面もあるでしょう。そのような静物写真を撮ることを、ブツ撮り(物撮り)といいます。
キレイな写真や、イイね!と思う写真を自分で撮ろうとする時に、ブツ撮りの基本を理解してると、どう撮ったら望むイメージに近づけるかのセッティングが早くなり、よりクオリティーの高いイメージ作りに時間を割くことができます。
そこで、ブツ撮りが上手くなるコツをステップを踏んでやってみましょう。
上手く見えるブツ撮りの4大要素
- ライティング
- 物の置き方、構成
- 画角
- 構図
ブツ撮りが上手くなるコツをわかりやすく4つの要素に分けてみました。こうでなければいけないというものではないですが、これが分かると撮影がよりスムーズに行えると思います。
ライティング(自然光)
どんな光だと物がキレイに見えるかというと、ズバリ逆光から半逆光の状態で、その光が手前に柔らかく回っていると、立体的で自然なトーンが出せます。
そして一番簡単でキレイに撮れるのは自然光、つまり太陽の光です。照明機材などのコストもかかりません。ただし、撮れるのが日中だけで、光の状態も時間帯によって変わるので、同じ光の状態で色の正確な再現が必要な商品を撮るような撮影は難しくなります。
それほど数も多くなく雰囲気が最優先する被写体で、例えばフードメニューなどは自然光で撮ると良いでしょう。では食べ物を美味しそうに撮ってみましょう。
自然光の撮影セットです。
光の良く入るガラス窓にトレーシングペーパーもしくは白い薄手のシーツなど、光を拡散して透過するものを貼ります。直射日光では光が硬く影がキツく出るので、このようにディフューズして柔らかい光にする必要があります。
次に被写体の影になる部分を、サイドから手前側に白いレフ板で光を起こして明るさを補います。カメラで構図を決めたら画面に入らないギリギリまでレフ板を寄せてみて、影の部分の明るさが自然な感じになるよう位置を調節します。
このライティングでシュークリームを撮ってみました。ピスタチオ・クリーム入りで、右下部分に少しだけ緑色のクリームがついてます。
どうでしょう。たったこれだけのライティングで、お店の広告で見るような写真になっていると思いませんか?
では、この写真をもう少し分析してみましょう。
物の置き方、構成
メインの被写体であるシュークリームが引き立つように、白い皿を用意しました。大きさのバランスも大切になります。
画角
食べ物のアップの場合、画角が35mm判換算で50mm〜100mm程度のレンズが使いやすく、背景のボケもコントロールしやすいです。今回はセンサーサイズがAPS-Cのデジタルカメラに、50mm(35mm判換算で約80mm)の単焦点レンズを付けて撮影しました。
F値の明るい単焦点レンズを使うと、それよりもF値の暗いズームレンズを使うよりも背景をボカした写真が撮れます。
それと、35mm判換算で80mm〜100mm位のレンズを使うと、被写体の形の歪みが少なく、かつ望遠効果で背景がボケて立体的に見えるという利点があります。広角〜標準系のレンズも被写体にかなり寄れば背景はボケていきますが、どうしてもパースが付くために形が歪んで見えてしまいます。
レンズの画角については、この記事“レンズによる表現(広角・標準・望遠)の違い”を読んでいただければ参考になると思います。
構図
撮影アングルや構図にこれといった決まりはありませんが、ブツ撮りの定番としては真俯瞰からや、真正面、斜め45度などがオーソドックスなところです。おおまかに言えば、真俯瞰や真正面から撮ると説明的なカットになり、斜めからは印象を伝えるカットになります。
お皿に乗っている食べ物の場合は、テーブルに乗っているそれを食べる時に、座っている自分が見る角度が美味しそうに見えるということを覚えていると良いでしょう。もちろんそれがすべてではなくて、見たことのないような新鮮なアングルを探すというのも一つの方法です。
それと食べ物が乗っているお皿まで、全部構図に入れようとするとメインの被写体が小さく目立たなくなるので、画面からはみ出す位の方が目を惹く写真になります。
水平が基本ですが、あえてカメラを傾けて印象的にすることもあります。
後は、自分のセンスで良いと思えるカットはどれかを探るために、微妙にアングルや構図を変えて沢山撮ってみることです。被写体のどこにピントを合わせるかや、レンズの絞りを変えてピントの合う範囲(被写界深度)で、見栄えがどう変わるかも大事なポイントになります。
では、もう一度最初に出したカットを見てみましょう。
キレイに見えるブツ撮りのキーポイント
- 明るさ
- 色温度
キレイに見えるブツ撮りのキーポイントは、上記の2つになります。
同じ写真ですが、明るさと色温度が適正でないと、印象がかなり違って見えます。上に比べて下の方は、少し暗く、色温度が高いので、全体に青っぽく見えます。こちらはあまり美味しそうに見えないですね。このように明るさと色温度が、写真の印象のかなりの部分を占めています。
適正露出については、この記事“適正露出の写真を撮る・前編(絞り、シャッタースピード、ISO感度の関係)”と、この記事“適正露出の写真を撮る・後編(EV値とカメラの設定)”を、色温度については“ホワイトバランスを設定して良い色合いの写真を撮る”を参考にお読みください。
ちなみに、今回撮影した写真はすべてRAWデータで撮っています。なぜかというと、RAWで撮ることで撮影後に画像の劣化を気にせずに明るさや色温度を調整できるからです。その分、後でやり直せないライティングや構図に集中できます。
これはPhotoshopのRAW現像画面です。PhotoshopでRAWデータを直接開くと、自動的に「Camera Raw」というプラグインが立ち上がり、RAW現像専用モードになります。
画面のように色温度や明るさ、コントラストなどを細かく調整してRAWデータから画像を出力します。jpegで撮影した写真も、後でPhotoshop等で明るさやトーンを調整できますが、シャドウがつぶれていたり、ハイライトが飛んでいたりするものは修正できかねますし、補正量が大きくなるほどに画像が荒れていきます。
その点RAWデータを調整しても、データ自体は変更されないので、何度も調整して劣化なく望む画像に仕上げることができて便利です。
尚、ほとんどのデジタルカメラには、カメラメーカー純正のRAW現像ソフトが付いています。それらの純正のソフトと、Photoshopなどのサードパーティ製ソフトでRAW現像するのは、基本的には同じですが、トーンの出方や処理できるパラメータなどにそれぞれ若干違いがありますので、色々試してみると面白いです。
次回、“ブツ撮りをしてみよう Vol.2〜蛍光灯ライティング”では、撮影用の照明としては手軽に扱える蛍光灯ライトを使ったライティングで撮影する際のコツ等を説明します。